ドンガリンゴP (Kinra) の ひみつきち です。
かってに はいっても いいですけど。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

1imb0(3):深夜の解明

どうも、新曲のPV制作が詰んでるドンがリンゴPです。
やる気がまったく出ない中、昨年自分の掲示板に書いた「1imb0」の歌詞の説明を見て、
「そろそろかなぁ」と感じ、日本語に翻訳してここに貼ろうと思いました。
皆さんの解釈の余地を殺してしまいそうなほど詳しいので、
そんなのいやぁっていう方はハンマーとかでモニターをぶっ壊す、もしくはこのページを閉じてください。
ちなみにロラン・バルトの「作者の死」という概念が学界の主流になってますけど、
自分は「みんなで殺し合え」派ですので、
本文を読んで何か感想や質問があればコメントしていただけば嬉しいです。

それでは行きましょう。



「1imb0」は、神が人類の世界を創る前に試作した機械の世界を描いた歌詞。
PV上、歌ってる人(二人?)は「はぐれボーカロイド」という名義なんだけど、
ストーリーでは歌うことを特に強調せず、単に「機械」として描いている。

Love, riot, categorize.

昔の解説記事でも言及したとおり、元々は歌詞を「Rage」から始めるつもりだったが、
自分が大学で読んだ『イーリアス』の英訳本も「Rage」から始まったので、
意味も無く回避することにした。結局「Rage」は他の位置に入れたし。

Aメロに入れた英単語は全部命令形である。
コンピュータープログラムのコマンドは全て命令形なので、それを捩ったものである。
自律機械にとって、永久に実行されつづけるコマンドこそ「人生」で、
機械たちの人生の豊かさと多様性を描くために、
Aメロのこの位置には必ず、互いに対極を為す2つの言葉を入れている。
最初に登場したペアは、もっとも優しくて包容力のある行動と、
もっとも暴力で排他的な行動。
このペアは、私がずっと「あらゆる創造行為の原動力」
であると考えている2つの衝動に当たり、
《セックス》と《バイオレンス》とも言えるし、
《ロマンス》と《エピック》とも言えるし、
《萌え》と《燃え》とも言える。
だけど二極の後には必ず、正と負の無限なる振り子運動の中に構築されていく
《コンセンサス》というものが浮かび上がる。例えば、「分類する」。
「1imb0」が終わった後の世界でも、アダムはエデンの園の獣たちを命名したのだが、
それが「カテゴライズ」である。

Shiver, slay 殻の中で 旋回。

「1imb0」は暗い雰囲気の曲なので、
Aメロの前半で二極を提示した以降、一辺倒に負の概念を羅列することで
その雰囲気を作り上げていく。
だから2行目からはもはや正と負ではなく、螺旋状に堕ちていく悪循環。

悪循環を描く序列の中で
「慄く」(被害者に成る)の後に「殺す」(加害者に成る)を置くのは、
自分の道徳観と言えるだろう。

生マレ 死ナセ 相継ぐ

個体と個体の繋がりを強調したいので、「相」を入れた。
なので一つの個体が「誕生する・死ぬ」ではなく、
一つの個体が他の個体に「生まれる・死なせる」ことを語る。
韻を踏むためでもあるけど。

崩れかけのパラダイスは今日も平和だ

試作された挙句置き去りにされた世界だから、
強制的に破棄されるまでは存続できるとは言え、
内部から見れば常に崩壊し続けている状態にあり、
完全崩壊寸前でバランスを保てているに過ぎない。

生産ラインの果て 神の国へ(堕ちる)

そしてこの世界自身には、自給自足する価値も無い。
実験品であるゆえ、次の段階に貢献することだけがその存在意義だった。
このフレーズから、この世界を生きる命が無機物であることをほのめかし始める。

Rage, lust, rationalize.
Stray, rot ケイ素循環さ。


2回目のAメロは振り幅をちょっと縮めて、
1回目ほど激しくなくなったが、基本のパターンは変わっていない。
二行目で破滅に向かっていくところも含めて。

前の記事にも言及したが、
「珪素循環」はアイザック・アシモフのエッセイで読んだコンセプト。
人類が炭素生命体であるように、機械は珪素生命体と言える。
アシモフは未来を想像する方向で珪素生命体という概念を提示したが、
この歌詞では逆に、「もし珪素生命体の方が先だったら」というシナリオを想像する。

組マレ 砕ケ 絶えなく

前のフレーズで「機械の世界」という本質をバラしたので、
ここからは明示的に無機物を描く。
「砕キ」ではないところからもわかるかもしれないが、
《個体と個体の繋がりを強調する》よりも《韻を踏む》ことが重要だった。
それでも、《他の個体の存在》を示唆するようには工夫した。

作りかけのパラダイムを振り出しに戻す

組み直せる珪素生命体でも、炭素生命体のようにライフサイクルがあって、
何度も組み直されることになる。
我々が何十年生きて、せっかく人生観を構築したのに死ななければならないように、
機械たちも《リセット》を何度も何度も繰り返している。

殻の外は夢見る約束の地
殻の外は光がある世界さ
殻の外は光がある浴びれば死ぬけど


Bメロは仕様上、分岐できるような歌詞を入れることが最優先なので、
「光がある世界」と「光のある世界」の違いをツイッターで質問することもあったが、
結局お構い無しに「光がある」を入れた。

この歌詞の話では、神は光を創ると同時に試作世界を抹消したので、
「光」がこの世界の生命にとって破滅の象徴になるのも自然である。

どうして 僕らに与えてくれないの?
どうして こんなのが生なの?


「ど」を被らせるために疑問文にせざるを得なかったわけだが、
個人的に歌詞に疑問文を入れることは好きじゃない。
ネタ切れ感があるんで。

灰は塩に 塵は道に 作り直し 浪費は無し

成句の「灰は灰に、塵は塵に」に、
聖書によく出てくる「塩」と「道」のイメージを入れて、
機械世界の生命に対する認識を描いた。
死して屍になることが終わりではない、屍からは新たな命が構成されると。

死も積もれば命となる 魂など自ずと憑く

そして「塵も積もれば山となる」を捩って、更に極端な言い方をした。
生きること自体が死の集積であり、
生きている命は全て無数の小さな死によって構成されている、と。
この生命観では生と死は同時に存在するし、「魂」とは命の副作用でしかない。

僕らが追い込んだ神話 僕らの手で糧にしたら
聖なる物 無垢なる物 殻の中の何処にあるの?


しかし、この事実を知ると、あらゆる神話は意味を成さなくなる。
神話とは、「屍が命を構成する」サイクルが無数に繰り返した前に、
「誰か」が残していった嘘でしかないし、
その「誰か」も、屍になっては命に組み直されて、
無数のサイクルを重ねながらも未だに存在しているから、
その嘘は現代を生きている我々が吐いたものとはなんら変わりなく、
神聖性などあるはずも無い。
そうやって機械たちは嘘を見破ったのだが、
そのせいで失われた神聖性を惜しむ羽目になる。

この歌詞を書いた時、ちょうど「神の粒子」と呼ばれるヒッグス粒子が
話題になっていた。
「神って、もう微粒子レベルまで追い込まれたんだな」と思った。

嗚呼 この場所もか
planned to be left out of heaven and hell


全ての神話が崩壊した後、残されたのはただの世界である。
この世界にある生命はこの世界の中で循環するしかなく、どこにでも行けない。
天国も地獄も、光があった後に創られたあの世界のためのものだった。

Rise, change, demystify.

3回目のAメロでは規模と激しさを更に縮めた。
文明の進歩と共にというか、機械たちの行為はもっと自制が効いてて、
もっと形而上のものになっている。

Take, break ゼロとイチを連打

しかしいくら自制しても、2行目では「奪う」「壊す」で破滅に向かっていく。
後半のフレーズは、ぶっちゃけ雰囲気づくり以外の意図は特に無い。
(今思えば、存在すると破壊されてなくなるの繰り返しって解釈になりそうだけど、
0と1はどちらも存在してる状態なので、微妙に合わない)

引カレ 押サレ 続々

積極性が落ちつつも、他の個体とのインタラクションを強調する。

薄れかけのパラライシスは誰の為なの?

今まで描いてきた神話の崩壊は、
虚言による思考停止からの覚醒であるが、
実験世界の終焉へと繋がる道でもある。

枷を解き自由になりたい
枷を解き放たれる時を待ち倦む
枷を解き放たれる時身も砕けるの


連用形の途中で分岐するというチャレンジだけど、
言っていること自体は前のフレーズと同じ。
覚醒したのはいいが、そのせいで破滅することになってしまう。

ちなみに「枷」の字は「ボカロ」に似てるから使ったのだけど、
隠しネタ程度に過ぎない。

のぞむのは こんなものか?
のぞむのは 慈悲という罰なのか?


ここも「の」を被らせるために使える言葉は制限されてるけど、
ちょっとした抵抗として、気付きにくい兼用法(シレプシス)を入れてみた。
2行同時に歌う「のぞむ」だけど、
1行目は「望む」で2行目は「臨む」。
それでもネタ切れ感は否めないけど。特に1行目は。

産まれ抱かれ呼ばれ泣かれ離れ廃れ汚れ乱れ
焦がれ破れ遅れ溺れ恐れ暴れ潰れ壊れ

産み出され検定され調整され作り直され
上書きされ圧縮され暗号化され初期化され


大サビはなんと言っても四角を描くのに一番悩んだ。汚い手もいろいろ使った。
最初の外周はまだ簡単で、
「同じ字で始まり同じ字で終わる」「文字数が同じ」だけでクリアできる。
(PVのサイズを考慮して「縦は18文字」という条件も設けたが、
実際に作ってみたらあんまり関係なかった)
リズムのために、連用形が「れ」で終わる言葉だけかき集めてきたところも
また面倒くさかった。

形式上の縛り以外に、内容上の縛りもあった。
片側(PVでは上+右)は「人間の感情」に関わる動詞を使い、
もう片側(左+下)は「機械のプロセス」に関わる動詞を使わなければならないという。
この世界のいろいろな生き様を振り返ることが大サビの目的なのだから。

禁じられ戒められ称えられ伝われ謳われ
辱められ貶められ蔑まれ慈しまれ

禁制され複製され分類され隠蔽され
最適化され再生され改名され削除され


内周に入ると、形式上の縛りがキツくなってくる。
各辺から2文字ずつ削らないとダメなので、選べる言葉も大分制限されてしまう。
しかも外周の上+右にラ行下一段活用を使いすぎたせいでネタが切れてしまって、
内周では左+下と区別するために「『される』以外の受身」を使うことにした。
長さの制限も兼ねて、漢字の読みが長い動詞しか入らなかった。

電気と夢と熱と希望と涙の蒸気圧と
欲望の減数分裂と真(まこと)の臨界点
愛の放射壊変と悪の回折関数から
物語の極限は黙示(アポカリュプシス)に谺(こだま)する


そして最内周。文字数制限が更にキツくなったせいで、
今までの縛りをすべて捨てても普通の日本語では入りきれない。
万策尽きたので、反則まがいな手を使うことに。
「まこと」と読んで「真」と書くとか「こだま」と読んで「谺」と書くとかは
辞書にある読みだからいいとして、
「アポカリュプシス」は今でもゴリ押しすぎだと思ってる。

嗚呼 いつか光(きみ)は 皆殺しに来るだろう

ここも例外的な読みを作ったが、
ぶっちゃけ「光」と言いたいのに2音しか入らなかったから
別の言葉を歌うことにしただけ。

歌詞は滅亡が来ていない状態で終わったが、
神はいずれこの実験品を破棄し、光あれと言われ
本当に創りたかった世界を誕生させることを予告した。

だがこうして、この歌詞は全体通して機械たちに我々と似たような感情を持たせ、
我々と似たような行為をさせ、我々と同じく神話を追い込ませ、
我々と似たような人生を歩ませることで、
逆に我々の方に遠回しな問いかけをすることになった。

では、我々の方は、本当に神が創りたかったものだろうか、と。


作詞した時はそこまで考えてなかったけどね。
本当にただ、あの機械たちの世界を想像したり同情したりしてただけだった。
同情する相手が自分だったことに気付かずに。


それでは、また何か語りたくなったときに会いましょう。新曲の発表記事だといいな。
スポンサーサイト
  1. 2016/09/01(木) 22:38:11|
  2. さくひん
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

PROFILE

Kinra

Kinra
通称ドンガリンゴP。でも好きなものはリンゴじゃなくて、言語です。今は訳者として毎日いろんな言語と戯れてます。そして極たまに、曲を作ったりもします。
Twitter: lwanvonling

LATEST TOPICS

LATEST COMMENTS

CATEGORIES

Script by Lc-Factory
(詳細:Lc-Factory/雑記)

BRANCHES

ARTICLES

全ての記事を表示する

VISITS

BANNER


しばらくこれで。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。