ドンガリンゴP (Kinra) の ひみつきち です。
かってに はいっても いいですけど。

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Avannaのための中国語調声メモ(1):喋る場合

どうも、最近の記事でできるだけ敬語を使うようにしてたけど、
なんかウンザリになってきたドンガリンゴPです。
というわけで悪いけど今回は昔の書き方で行きます。

この前の記事で、洛天依の濃厚な北京訛りを回避するために、
巡音ルカの2ヶ国語DBを利用して台湾訛りの中国語を調声する方法について少し紹介したんだけど、
実はその時、既にZERO-G社のAvanna+YAMAHAのVY1で中国語調声を一度行って、
『風中的名字』の時以上の成果を出していた。

そして3日前、ツイッターで鬼畜な天野P主催のイベント「トクロ・HANASU電話応答音声選手権」を、
みすふぃ(@Mistfea1)さんの作品を通して知ることになり、
面白半分(というか面白100%)で緊急参戦してみた。
その成果がこちら

これは、
①英語DBであるAvannaのみで
②1トラックのみで
③DAWでの切り取り処理無しに
④中国語と
⑤少しだけの台湾語と
⑥少しだけの客家語の
⑥歌ではなく喋り
を作成したものである。13秒の調声に、約4時間かけました。
セリフを掲示せずにplurk上の台湾人たちにも聞かせたんだけど、
聞き取れない部分は5文字程度でした。

動画説明文に載せてあるけど、一応ここにも参考用のDLリンクを貼っておこう。
電話っぽくした動画Ver.
ノーマライズのみ
VSQファイル

前回でも最初から言ったけど、そもそも日本の皆さんにとって中国語調声は使い道が無いし、
使うとしても、北京訛りを気にしないなら洛天依を使ったほうが簡単。
なので今回の調声メモは、最初は台湾人向けに中国語で書いたものです。
でも書いた後は、「これを日本語に翻訳するだけなら別にいいじゃん」って思ったので、
需要が無いことを承知に掲載することにしました。
前回と同じ、読んでいて面白いかもしれませんし、話のネタくらいにはできましょう。

そんじゃ説明はいりまーす

◆台本

喂您好,這支電話的主人現在不在,
而且他懶得自己錄答錄音,
有什麼事的話等嗶聲之後就可以說了,
謝謝,
多謝,
恁仔細。

(意訳)
もしもし、この番号の持ち主は現在留守中で、
しかも留守電メッセージに自分の声を録るのも億劫だったんです。
何か用件があったら「ピー」の後でどうぞ言ってくださいっと。
ありがとうございます
ありがとうございます(台湾語)
ありがとうございます(客家語)。

Avannaの無気力な声を逆手に取って、ダルそうな留守電メッセージにしたんです。
(悪い言い方にするとこうするしかなかったってこと)
中国語・台湾語・客家語で挨拶するのは、選挙演説とかによく見られる締め方ですが、
ここは単に「はいはい早く用件言え」ってニュアンスで使っちゃいましたw

◆加工

まず一番簡単なところから説明しよう。
今回の調整は、DYNを一切いじっていません。64一直線です。BRIの方は全部127にして、GENは全部24。
BREとCLEはデフォルトで0。大雑把です、はい。

エクスポートしてから、ノーマライズ処理を施して、DAWに読み込む。
ボーカロイドの声はDYNを調節しないと音量が極めて不安定なので、
コンプレッサーを掛けなければならない。
というわけで、ボーカル専用のRenaissance Voxを掛けました。スレッショルドは-16dBです。
次は電話っぽい効果。要するに、250Hz~4000Hz以外を全カットするんです。
今回は何も考えずに、Waves Q10の「Telephone」プリセットを使いました。
これでだいぶ応答メッセージっぽく聞こえるようになります。

◆調声

実際にVSQXをDLして開けてみた方が一番手っ取り早いんだけど、
それじゃ記事を書く意味がなくなるので、トラブルシューティングの要点をまとめてみた。

【1】ピッチの決め方:声調とアクセント
(前回音調って書いてたけどどうやら声調の方が正式用語です)

トークロイドなので、歌の時以上に、声調に気を遣わないといけないのです。
中国語の四声と軽声、および第三声の変化は理論だけならウィキペディア先生に聞けばいいのことですが、
ここはちょっと追記します。
①第一声は段位声調とのことだが、実際は語尾がちょっと落ちることが多い。細かいので気にしなくてもいいと思うけど。
②第三声は「半低→低→半高」で、「第三声が連続する場合に、最後の一つ以外は第二声に変化する」と説明されるが、実は前半の半低が省かれるということです。説明されていないのは、第三声が第三声以外に続く場合、逆に後半の半高が省かれること。つまり第三声は単独でない限り必ず変化するってことです。
③音程は、大体上記のウィキペディアに書いてある声調値準拠でいい。第一声の微妙に落ちるとこは2度でいい。文章が長い場合、重要じゃない部分は音程をもっと狭くしてもいい。逆に広くするとドラマチックになる。

中国語の発音を調べたいときは、グーグル翻訳先生に読み上げていただくのも手ですが、
いまテストしてみたところ、10%位の割合で声調を間違えるので、妄信してはいけません。

流暢な発音を求めるには試行錯誤しかないけど、今回の経験から、以下のことがわかった。

①PITまで駆使して声調を作る必要は無い。
 2つの音を繋げてポルタメント機能に任せればいい。
 たとえば第二声の「人」(ㄖㄣˊ[ren2])は、[Z V]低-[n]高の配置でOKです。

②中国語は、同じピッチを連続に出すことが好ましくない。
 普通の場合は、同じ声調を喋れば喋るほど、ピッチが低くなる。
 日本語も同様の気がしますが、どうでしょうかね。
 (ただし疑問文は高くなる)
 たとえば「電話」(ㄉㄧㄢˋ ㄏㄨㄚˋ[dian4 hua4])、
 二文字とも第四声なので、
 [dh i:]高-[e n]低 [h O:]高-[{]低という配置になるけど、
 今回ではC#3-B2 C3-A2になってる。
 もちろん、際限無く低くなるわけには行かない。
 GENによって適正な音域がある。今回(GEN=24)は、F2辺りが限界です。
 行き詰ったら同じピッチを出し続けることになるので、
 第一声、第二声など、高くなる声調を機にピッチをリセットしよう。
 もしチャンスが無かったら、PITを使って微妙な変化でも入れよう。いい味が出る。

③子音の方が大事。
 ここまで読んだらわかるかもしれないけど、
 中国語は声調があるけど、歌うように喋るって感じじゃないんです。(台湾語・客家語と違って)
 だから、短い助詞や代名詞なら、母音はハッキリ発音しなくてもOKです。文脈でわかるしね。
 こういう場合は、次の字のVELを下げて、その子音を優先することができます。
 ちょうど中国語の機能語は英語DBで調声しにくい母音ばかり(ㄜ[e]とかㄨ[u]とか)なので、
 短くしてごまかせるのもこのやり方の利点です。

【2】発音符号の選び方:子音と母音

①ㄐㄑㄒ(j q x)

これらの子音は英語に存在しないので、近似音を使うしかない。
VELをMAXにすれば、普段「ㄗㄘㄙ(z c s)」に使う[d z] [t s] [s]で代用できる。
これは、ㄐㄑㄒとㄗㄘㄙが相補分布になっているせいで、
リスナーが後の母音で子音を分別できるためである。
同じ理屈で「ㄓㄔㄕ(zh ch sh)」に使う[dZ] [tS] [S]も代用できそうだが、ひどい英語訛りになってしまう。
ちなみに、「ㄐ(j)」と「ㄓ(zh)」はそれぞれ[t s]と[tS]で代用できるけど、
VELを上げてアタックを短くしないと有気音の「ㄑ(q)」「ㄔ(ch)」っぽく聞こえる。

あと、これらの摩擦音は、なが~いアタックタイムを必要とする。
現在のボーカロイドでは、音が密集しすぎると挟まれた子音が消えてしまうので、
(例え[Sil]に挟まれてもです)
1トラックでやるなら、VELでアタックを短くして、音と音の間隔を開けるしかない。

②ㄣㄥ(n ng)

n・ngと書くけど、台湾訛りでは全部nに聞こえるので、[N]を一切使わなくていい。というか使わないほうがいい。

ちなみに、日本語のように、鼻音を単独の音に入れることをお勧めします。
前回は「中国語はとにかく1文字に1拍」って言ったけど、
更に「1文字に1音」にしたら、英語DBは鼻音を短くしすぎる傾向がある。
鼻音の長さで音の感じが全然違うので、コントロールの効くように独立させたほうがいいです。

③破裂音

前回にも言ったけど、中国語はほとんど濁音が無い。
なので、「ㄅ(b)」の場合、[b]でも[bh]でも[p]でもある程度通用する。
有気音の「ㄆ(p)」の方に聞こえさえしなければ、適当に選んでOK。

逆に、有気音を作る方がちょっと難しい。
DAWに取り込んでから、子音の部分を切り取って、母音との間隔を開けると、
有声開始時間が長くなるので、有気音に聞こえるけど、
今回はそういう処理無しなので、このチートなやり方(笑)は使いませんでした。

④ㄌ(l)

面倒くさい。英語DBには[l][l0]があるけど、どれもコントロールしづらい。
以前の調声で[d]で誤魔化したこともあるけど、実用性は低い。
「了」(ㄌㄜ˙[le])などの常用字に出会ったら覚悟してね。

⑤ㄏ(h)

やっぱり[h]しか無いけど、
コイツもアタックが長い子音なので、ㄐㄑㄒの説明に参照すること。

⑤母音まとめ

いままでのコツも全部DBによって差があるのですが、
下記のテーブルは更に、Avannaじゃないと通用しない可能性が高いので、
トラブルシューティング時の考え方の参考として読んでください。
※このテーブルは注音符号準拠で、ピンインは参照用です。
 たとえばピンインの「e」は場合によって違う音を指し示し、
 それぞれ注音の「ㄜ」と「ㄝ」に対応するので、
 「e」の対処法を知りたいときはどの「e」なのか確認してからにしなければならない。
注音ピンイン解決法
aぶっちゃけ「あ」だが、[Q]は深すぎるので[{]で。逆に口が開きすぎたと感じたら[Q {]で。
oぶっちゃけ「お」だが、注音のㄛは単独の時を除いて、どう表記しようが基本的にㄨㄛ(-uo)として発音するので、[w O:]でいい。ダメだったら[w Q]で。
e前回にも紹介したとおり、[V]・[@]・OPEの低い[Q]のいずれかで。短い音なら[e]でも通用することがある。今回の「這」(ㄓㄜˋ ze4)も[dZ e]でした。
eぶっちゃけ「え」だが、ㄧㄝ(ie)としてしか出現しない。短い[i]の後に[e]・[I]・[eI]。短すぎる音の場合、[I]しか使えない。[I]も[eI]も子音によって発音が色々変わるけど、どのみち前にはiがあるので関係無い。
aiぶっちゃけ「あい」だが、[aI]はほぼ使えないので[{]-[eI]で。
eiぶっちゃけ「えい」なので[eI]で。上のㄝ(e)と同じじゃん!ってツッコミはごもっともです。台湾訛りでは後の「い」が微妙なんです。正しく発音したいときは[i:]でも付けとこう。
aoぶっちゃけ「あお」なので、ここまで読んだらわかるだろうけど[aO]は使えない。[{]-[O:]にしよう。
ouやばい。[O:]-[@U]でも[@U]でも[O: u:]でも[V u:]でも微妙。時間かけてじっくり調整しよう。
ㄢㄣㄤㄥan en ang engㄚ(a)・ㄜ(e)と鼻音のコンボです。鼻音は全部[n]でいいって言ったけどㄢ(an)とㄤ(ang)も区別しないの?って思われるかもしれないけど、まあたしかに区別しない台湾人も多い・・・って言ったら無責任すぎるよね。実は[Q]が深すぎるところを逆手にとって、[Q n]と入力すると、後の鼻音がngに聞こえてちゃんとㄤ(ang)になります。
iぶっちゃけ「い」なので、長いなら素直に[i:]だが、短いなら[eI]の方がリラックスした音になる。前に子音がない場合、[j]や[?]を入れて、前の音にくっ付かないようにする必要がある。[j]はちょっと英語訛りかも。
uㄡ(ou)以上に絶望的。[u:]はおかしいし、[U]は全然ダメ。[@U]-[u:]や[@U]-[U]も試したけど、やっぱり微妙。一番絶望的なのは、日本語DBで補助しようとしても、「う」[M]ではどうにもならないこと。プライドを捨てて洛天依に頼むか。
yu「ゆい」が合体したような音で、今回は使わなかったが、[u: I]でやってみたことがある。良くなかった。超余談だがフルメタTSRのゲイツさん(CV:大塚芳忠)の「玉」の発音が意外と上手い。それ以外の中国語は聞けたものじゃなかったけど。
ㄧㄨㄩ+他の母音i u yu ~ピンインだと何のことかわかりにくいかもしれないけど、とにかく二重母音のことです。わたり音の[j]・[w]は使えるが、その前に子音がある場合、わたり音+母音よりも母音2つにした方がいい。1つ目は一瞬だけでいい。今回、ㄨㄚ(-ua)は[u:]-[{]の代わりに[O:]-[{]で、ㄧㄤ(-iang)は[i:]-[Q n]の代わりに[e]-[Q n]を使って、もっとリラックスした発音にした。二重母音の発音に例外が多いので、グーグル翻訳先生に相談しよう。これくらいなら信頼できると思う。
(空韻)i空韻というのはㄗㄘㄙㄓㄔㄕㄖが単独に書かれる時省略された母音、もしくはzi ci si zhi chi shi ri)のiのこと。[I]・[U]が使える。普通は[I]を使うけど、一応2つとも試して効果を確認しよう。[N]を打って、MIX段階でEQで鼻音感を切り捨てちゃうというチート技もあるんだが、[N]の音量は死ぬほど小さいのでDYNとかゲインとかの調整がめんどくさい。
er台湾訛りの特徴として、この反り舌音は北京訛りほど濃くない。それでも[@r]を普通に使えばいいんですが、ㄜ(e)だと思って入力してちょっとだけ[@r]をつけるのもいい。


⑥おまけ:台湾語と客家語の「ありがとう」

台湾語と客家語は、中国語とはまったく違う言語だけど、
今回はそれぞれ一言しかなかったので、難しいところは無かった。
台湾語の「多謝」はㄉㄜ ㄒㄧㄚ(de1 xia1)だと思って、
客家語の「恁仔細」はㄢˇ ㄗˇ ㄙㄝ(an zi se)だと思えば調声できる。
(中国語にㄙㄝ[se]という組み合わせは無いけど)

ホントはありがとう以外客家語喋れないんですがw


いま思い出せるのはこれだけです。
ちなみに、留守電メッセージ最後の「ピー」は、
高い[u:]をDYNで頭とシッポを切って作ったんです。
では、この記事はここで終わります、コメントは「ピー」のあとでお願いします。

ピーーーーーー
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  1. 2013/04/09(火) 04:55:45|
  2. たね
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巡音ルカのための中国語調声メモ(2):2トラック工法

どうも、1~2日に一回のペースで書きたいと言ったけどあれは嘘だ、のドンガリンゴPです。
いや・・・自分の忙しさを甘く見たぜ。長文を書くための〈時間の塊〉がまったく出ませんでしたね。
これ以上約束を破ると罪悪感がハンパないので、
今回は予告通り、私が調声の難点を突破するために、2トラックを合わせたところを紹介していきたいと思います。

◆前提として
単純に子音・母音の数で見れば、英語ライブラリの方が豊富に見えますが、
中国語調声のときは、やはり日本語メインで音を作りたいのです。
理由は以下の2つ:
①日本語の方が入力が直感的
英語は発音記号モードに切り替えないとややこしいから、一括入力(流し込み)は難しい。
②中国語のリズムはどっちかというと日本語寄り。
第0回の記事で、中国語と日本語のリズムの違いについてちょっと紹介しましたが、
音節と音節のスムーズな繋ぎを重視する英語と比べれば、
音をハッキリさせる傾向を共有する中国語と日本語はやはり似たもの同士です。
本当に「どっちかというと」の話ですが。

というわけで、調声するとき、まずは日本語DBのトラック1を作って、大まかな発音を入力して、
それを再生してみて、不自然な発音があったら英語DBのトラック2で補うことを試みる、
というのが私の標準作業手順です。
この調声メモはテクニックの話ですが、
テクとかよりも、「どこが不自然か」を見つけるほうが難しいと思いますので、
トラブルの部分を赤字にして見やすくしました。
解決法のディテールまで読みたくなくても、赤字の部分をざっと読んで、チェックリストとして使うことが出来ます。

◆簡単な組み合わせ
例の曲(相変わらず、exampleの例です)の出だし「每一個傾斜的單擺」。
ピンインで書くと「měi yī ge qīng xié de dān bǎi」と
母音が a と i と e の3種類しかないように見えますが、
「mei」と「xie」の e はどちらも「エ」に近い音で、
「ge」と「de」の e は前回にも言った /ə/ です。

ei と ie は複母音としてそれなりに厄介なのですが、
ルカの [e] と [i] はお互い相性がいい(繋ぎやすい)から、
とにかく e と i の長さの配分さえ上手く決めれば大体OKです。
原則として、どちらも e が色濃いので、全長の半分以上を [e] の方に割り振ったほうがいい。
あと、2つの音で1文字を作るとき、2つ目のアタックを0にしないと2文字に聞こえるので要注意です。

2トラックの出番は、次の /ə/ です。
前回の説明通り、英語DBの [@] で代用できますが、実はもっといろんな方法で作れます。

①日本語DBの [a] のOPEを0にする
なんと、英語DBの補助無しに解決できる。
しかしこれは短い音なら誤魔化せるだけで、長い音だとやっぱり「ア」に聞こえます。
歌唱スタイルによれば(例えばロックっぽく歌い上げるなら)少々「ア」に聞こえても大丈夫ですが。

②英語DBの [@] の巻き舌シッポを切り落とす
これが一番近い音になりますが、DYN調節はちょっと面倒くさい。
短い音なら切り落とさなくても巻き舌は入りませんが、勢いも入りません。

③英語DBの [Q] や [V] のOPEを80ぐらいに下げる
[@] ほど近くは無く、その気になればやっぱり「ア」に聞こえますが、
普通の長さでもかなり説得力があります。
[Q] の方はもっと長い・高い音向きで、短い・低い音なら [V] を使いましょう。
難点は子音の組み合わせによって時々発音が違うところですが、
そういう例外の組み合わせに出会ってしまったら、子音を別のトラックに入れてクロスフェードさせれば解消できる。
その場合はやはり面倒くさいDYN調節になりますが。

掴みが肝心なので、1行目は出来るだけ自然に聞こえるものにしたい。
1行目で「この調声はいける!」と思わせることが出来たら、後はそんなに力を入れなくても通じるはずです。
なので、最初の /ə/ 対策として、私は全部のやり方を試してから、一番効果的な③を選びました。
例えば「個」(ge)の場合は、英語トラックの同じ位置に [g Q] を入れて、OPEを80にしました。

/ə/ を解決したら問題無し、と思ったら、「傾」(qīng)も不自然に聞こえました。
日本語で [tS i N] とルカに歌わせてみたら、
[tS] の発音が微妙に前に出すぎてる上に、[i] と [N] の繋ぎが唐突です。
(あくまでも「中国語に似せるなら」の話で、
 決してルカの日本語発音に文句つけてるワケじゃありませんのでご了承ください)

こういうときは、[tS] の発音位置がやや奥にあって、母音と鼻音の繋ぎもスムーズに出来る英語DBを使いたい。
というわけで、英語トラックに [tS I N] を入れてみます。(英語DBに [i] はありません)
すると結構いい感じになりました。

同じく、最後の「擺」(bǎi)も、普通に [b a][i] を入れてみたら、
どんな配分でも繋ぎがハッキリしすぎました。どうやら音自体が長すぎたようです。
英語DBの方が複母音がスムーズなので、ここは英語トラックに [b aI] を入れました。

◆細かい組み合わせ
日本語トラックから英語トラックに切り替わるとき、繋ぎが唐突になることもありますが、
これは日本語トラックの方が後にもう音が無いから、切り替わる前の音が余計に長くなったせいなので、
日本語トラックにも「まだ音があるよー」って思わせればOKです。
例えばさっき解決した「個」(ge)。
英語トラックに [g Q] を歌わせましたが、実は日本語トラックにもアタック0の [g a] を入れて、
DYNを切って一瞬だけ [g] が聞こえるようにしました。
「擺」(bǎi)の所も、日本語トラックに [b a] だけ入れました(子音以外ミュートされるから)。
当時はクロスフェード感覚でこうしたのですが、いま弄ってみたところ、
この一瞬だけの子音は実に無くても大して変わりませんね。
肝心なのはこの音の存在で前の音がおとなしくなったことです。

前回紹介した /ɨ/ 対策もこのやり方の一種ですが、
母音まで2トラックを融合させるので、
一気にDYNを下げるのではなく、片方のDYNを段々下げてもう片方を段々上げるという
正真正銘のクロスフェード手法を使っています。
/ɨ/ 系の母音以外に、/y/ (「去」 qū などの ū の音)を作るときもこのやり方でした。
英語ルカは、[S u:] と [tS u:] の時だけ、[u:] の発音がこの /y/ に近いものになるので、
これを利用して、日本語DBの [M] と英語DBの [S u:] をクロスフェードさせて、
/y/ 系の音(nū lū jū xū qūの5つがある)を作ることが出来ます。
細かいDYN調節が必要なので、当然面倒くさいですが、ここは仕方がありません。

◆もっと組み合わせ
最後に、例の曲に使った禁断の組み合わせ技を紹介しましょう。

どんなに2つのライブラリの力を合わせても所詮は模倣ですし、
理想の発音より、実際に入力した音の方向へズレてしまうのは明らかです。
例えばさっき紹介した /ə/ の3つの作り方ですが、
その中2つは「ア」寄りの音になります。
しかし、実際の /ə/ はもっと「ア」と「オ」を足して二で割ったような音です。

残念ながら、ボーカロイドはまだ2つの音を足して2で割る機能が実装されていません。
ならどうすればいい?

2で割らないことです。

簡単にいうと、大体のジャンルの曲には入る「ハモリ」というものを利用して、
メインボーカルとハモリが力を合わせて正しい音の錯覚を作る、ということです。
例えば「『ア』と『オ』を足して二で割ったような音」を作りたければ、
一人が「ア」を歌ってもう一人が「オ」を歌えばいい。

実は、こんなことをするだけで、足して二で割ったような音が出るわけではありません。
「ア」の音は元から /ə/ に聞こえる要素があって、それを「オ」でもっと気付かれやすくするだけのことです。
「ア」として聴けばやっぱり「ア」ですが、聞き手が勝手に文脈から判断して、違う音だとわかってくれるのです。
だから元から /ə/ に近い音を作ることが出来れば更に効果的です。
例の曲は、ハモリが許される限り、/ə/ は必ず2種類の作り方をそれぞれメインとハモリに使います。
元から2トラックが必要な音作りなら、合計4トラックを使うことになります。
実際、例の曲は合計6トラックを使いました。

このやり方のどこが禁断かというとまあ、ご想像の通り、
ハモリが許されなければ使えないということです。
ハモリがあったらおかしいところに、このやり方のためにハモリを入れたら本末転倒です。
あと、ハモリだけのカラオケバージョンを作ったらバレます。(ハモリ自体が2人以上なら問題ないけど)

大したテクニックは紹介しませんでしたが、
トラブルを見つけて、使える手をどんどん探索する原則と、
「どんな音を作るか」より「どんな音だと思わせることができるか」という心構えを
伝えることができたらと思います。

次回があれば、もっとメモっぽく、まとまりの無い文章になりますので、ご期待なさらぬように。ではでは。
  1. 2013/01/16(水) 16:20:13|
  2. たね
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巡音ルカのための中国語調声メモ(1):う!

どうも、2012年を振り返って見たら1曲しか作らなかったドンガリンゴPです。
振り返って見るばかりのドンガリンゴPです。
なぜかというと、振り返って見なければ、この調声メモが書けませんからね。
ごめん、強引な始まり方であることはわかります。でも始まっちゃいますよ。

◆例の曲
Exampleの方の「例」です。
今回の調声メモは、この『風中的名字』という作品の調声で得た経験から書き起こしたものです。

かなり昔の作品なので、アレンジがショボいけど、
まあ、1:00からのボーカルだけに注目してください。やっぱりショボいか。

この調声は、「訛ってるけど、中国語ネイティブなら字幕なしに聞き取れる程度」です。
日本語と英語DBの併用で、日本語のみのボーカロイドより多くのネックを突破できる巡音ルカですが、
それでもこの程度が限界みたい。私自身には、ちょっとシンガポール訛りの中国語に聞こえます。

◆「聞き取れる」を狙う
これは具体的なテクではありませんが、大事な「心構え」だと考えています。
出せない音は、無理に出させようとしても、メリットはない。
局地的な発音に拘るよりも、音と音の差異を作って、
異なるべき音素をハッキリさせるほうが効果的。
たとえば、舌を噛んじゃったときは、どの母音を言っても「あ」に聞こえますが、
もっと長い文を言えば、どの音が「お」でどの音が「い」か、判断できるでしょう。
腹話術師も、こうやって唇を動かせないままいろんな言葉を喋ってるんです・・・たぶん。
アイウエオを正確に発音できなくても、
「母音が5つある」と分からせれば、聞き手が勝手にこっちの発音に慣れてくれるはずです。

さて、具体的ではないことも散々書いてきたし、そろそろ具体的なコツを紹介しましょうか。

◆ウ段の使い方
標準語の「う」(/ɯ/)はかなり特殊な母音で、中国語や英語の /u/ の音とは違います。
日本人が中国語を喋って速攻バレたら大体こいつのせい。
しかもルカは英語DBの [u:] や [U] でも「う」みたいな発音をするから、
二つのDBの力を合わせても、この難点は克服できません。
一方、中国語には /ɨ/ という、日本語に存在しない音がありますが、
こっちは逆にルカのウ段で代用できる場合がある。
単独で聴くと、「つ」[ts M]は「ci」に、「す」[s M]は「si」に似てます。
(※ /ɨ/ と普通の /i/ は両方同じ子音と組むことが無いので、ピンインでは両方 i と表記する)
麻雀の「イースーチー」の「スー」(四)はまさにこの si /sɨ/ の音で、
英語の女性名スー(Sue)の場合は /su/ です。

[ɨ]を含める組み合わせは、zhi chi shi ri zi ci siの7種類です。
ci と si は前述通りで、
zi は ci の無気音版ですが、普通に「つ」を歌わせたら有気音になってしまうので「ず」[z M]で代用しましょう。
厄介なのは、それ以外の4つの組み合わせです。
ri は /ʐ/ という大変珍しい子音が含まれていますし、
(ちなみに前回「中国語に清濁の区別はない」って言いましたが、
よく調べたらこの音と /ʂ/ だけは「し」と「じ」みたいな清濁関係でした。)
zhi、chi、shiは、「ジュ」[dZ M]「チュ」[tS M]「シュ」[S M]と歌わせたら
「ユ」のわたり音が自動的に入ってしまいます。

そこで、ルカの英語DBを導入しましょう。
英語ルカには @ という、[ə] のつもりのはずだがなぜかシッポに巻き舌が入ってる母音があります。
中国語の /ɨ/ と /ə/ を足して2で割ったような音で、
単独ならどっちの代役にもならない音ですが、
[dZ] [tS] [S] の後につけると、それぞれ zhi chi shi に近い音になります。
厄介な r- も、[Z] (/ʒ/、genreのg-の音)でかなり再現できると思います。
(この曲は運良く ri の音が無かったけど、「人」ren は [Z e n] で再現しました)

更にDYNでシッポを切り捨てて、日本語ルカの[M]のシッポとクロスフェードすると、
いらない巻き舌を消しつつ、もっと /ɨ/ っぽい音にできます。

こういう2トラック工法はいろんなところで使いますので、
中国語調声するときは最初から2トラック用意しておけば便利です。
次回の記事で、2トラックで出来ることについてもっと書きたいと思います。乞うご期待。
  1. 2013/01/07(月) 23:02:43|
  2. たね
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巡音ルカのための中国語調声メモ(0):始める前に

ど~~も、年末にAvannaを迎え入れたばかりで、やや本格的英語調声に挑戦してるドンガリンゴPです。
最近は毎晩新曲の打ち込みをしながら、plurkで調声メモを取っていまして、
完成したらそれを纏めて、ここに掲載するつもりです。

が!

その前置きとして、去年の〈Rewind 2〉のボーナストラックで
中国語調声をやってみたときにわかったことを、ここで書いてみようと思います。
巡音ルカ(日本語+英語DB)を使用しましたので、
「ルカに歌わせる場合」を前提として書きますが、
ここに書いた原則を起点として、他のDBで試行錯誤してみるのも悪くないと思います。

◆需要ある?

正直なところ、中国語は英語などと違って、歌に入れたくなるようなステータスがありません。
フル中国語の曲を作ったって中国語ネイティブにしか受けませんし、
曲の一部に中国語を入れてもカッコよくならないどころか、滑稽に聴こえる恐れがあります。
それに今は正真正銘の中国語DBである洛天依も登場したし、
「中国語で曲作りたい!」という物好きな日本Pなら、
その北京訛りを気にすることなく簡単に運用できるでしょう。

故に、この調声メモシリーズは
・どうしてもルカに拘りたい、もしくは
・北京訛りが曲に相応しくない
と思ってる調声者にしか参考の価値が無いかもしれません。
でも、そうでない人にとっても、読んでいて面白いかもしれませんし、
意外なところで役に立つかもしれません。話のネタが絶望的に不足している時とか。

それでは、
さっさと具体的なコツを書きたいんですが、
今回はまず調声の前に知っておいてほしいことから始めましょう。
焦らしじゃないよ。ホント知っておいてほしいんだから。

◆ステップ0:予備知識

私がやるならいきなりボカロエディタを起動して音を打ち込んで発音入力ステップに入れますが、
中国語にそれほど詳しくない(たとえば、中国語を書けるけど上手く喋れない)人なら、
まず歌詞の発音を確認することから始めるでしょう。
中国語文章をグーグル翻訳にブチ込んで「Ä」ボタンでピンインを出させるのも良いし、
カタカナとか別の形で発音を確認するのも良いけど、
正確な発音の仕方を細かく書いたら、何か月分の中国語講座記事にもなりますので、ここでは割愛します。
(リクエストがあれば書けなくもないが、別のシリーズになります)

ただし、よくある間違いの回避策として、幾つかの注意ポイントをここで挙げてみたいと思います。
調声だけではなく、海外旅行の時も使えますよ。いいですよねー。

【0】そもそも中国語ってなに?
本気でこのメモを参考にしたい人なら間違えないと思いますが、
このシリーズで言う「中国語」は現代標準漢語、中国で言う「普通話」、台湾で言う「國語」、
英語で言うMandarin、世界中のスピーカーの言う「華語」です。
広東語・上海語・台湾語などのマターク違う言葉の調声コツを知りたい人は回れ右でサンキュー。
歌詞の発音を確認するときも、違う方言をごちゃ混ぜにしないよう気を付けて下さいね。

(ちなみに調声とは関係ないけど、台湾の人のコメントを見て「台湾語だー」って思ったら
 99.9%ハズレです。スラングが入ってることもあるけど基本的には中国語です。)

【1】中国語は清濁音の分別はほとんどしない。
ピンインでも、カタカナでも、ta・da、「ター」・「ダー」のような表記から、
中国語の破裂音にも清濁の分別があると勘違いされがちだが、
中国語にとって重要なのは、有気音か無気音かです。
たとえば、ピンインの「ta」は有気音の「た」(「たはー」みたいな感じ)に当たり、
「da」は無気音の「た」に当たる。

※追記:メモ(1)を書くときに気付きましたが、
 中国語の /ʂ/ と /ʐ/ (ピンインではshとrと表記する)だけは清濁で区別します。
 それ以外の子音は、やっぱり清濁の区別がありません。


ただし、ルカや他の非中国語DBを使う場合、このことを知っても、大して役には立たない。
なぜなら、確実に有気音を出せる非中国語DBは、現時点ではSeeUの韓国語DBしか無いからです。
英語も日本語も、清音と濁音があるけど、有気音と無気音は同じ音素扱いで、
単独に歌わせたらデフォで無気音になることが多いが、
組み合わせによって無気音のままだったり有気音になったりしますから制御し難い。
結局、清音をなんらかの方法で確実に有気音にして、無気音は濁音で代用する方がやり易い。
ちょっと訛って聞こえますが、それどころじゃなくなるので、
子音の正確さにそこまで気を遣うことはありません。

【2】中国語はとにかく1文字に1拍。
カタカナ表記だと「ー」を多用する中国語だが、表記のまま伸ばしちゃイカンぜ。
俳句や短歌の「拍」の概念で言うと、中国語の1文字は基本的に1拍です。どんな発音でも。
たとえば日本でもよく知られてるフレーズ「我愛你(ウォーアイニー)」。
カタカナ感覚で6音に入れたら、伸ばしすぎたように聞こえます。3文字だから、3拍が基本です。
長音として書かれる「ウォー」も、二重母音の「アイ」も、1拍です。
挨拶の「ニー・ハオ」は2拍ですし、中国人キャラ定番の「メイ・リン」も鼻音を含めても2拍です。
当然伸ばすことも出来ますが、要は中国語1文字=日本語の仮名1文字っていう感覚で音を配置するとOKです。
逆に言うと、配置がおかしかったら、調声でどうがんばっても自然には聞こえません。

去年のみらいのねいろ in 台湾で、かごめPさんも言っていましたが、
自然な中国語調声を目指すなら、このリズム感が一番重要なポイントです。

【3】中国語の音調もやたら重要。
これも音の配置段階で気をつけなければならないことですが、
「喋らせるならともかく、メロディーに入れたら音調関係ないじゃん」と思ったらブブーです。
音調とメロデイーが噛み合わなければ違う意味に聞こえるっていう説明も見たことありますが、
意味どころの話じゃありません。あまりに噛み合わないと、聴くに堪えないものになります。
どうしてもこの歌詞とこの曲調で行きたい!っていう時なら、
たとえば「上る曲調に下る音調」の場合は、1拍の中で微妙に落としてから上げる、ってのはよくあるやり方
(逆に言えば、下る音調じゃない場合は下る曲調であっても、
 勇み足で1拍の中で降りちゃったらヘンに聞こえるかもしれません)
ですが、どんな時でも通用するわけじゃありませんし、
このやり方の前提として、1拍の中で上げ下げをする余裕がなければなりません。
中国語のポップソングにボカロではよくあるアップビート早口がほとんど見られないのは、まさにこれのため。
(ラップはありますが、大体ラップは曲調がフラットだから比較的安全です)
100%合致しないと爆発するってほどキビしい縛りではありませんが、
重要なポイント(サビのフックとか)はミスりたくないものです。

◆フックといえば

さて、こういう漠然とした原則を書いておいたところで、
やっと具体的な調声メモに入れますね。というわけで、次からは本番です。
何パートになるかわかりませんが、とにかく1~2日に1パートのペースで書いていきたいと思います。
ではでは、次回お楽しみに。
  1. 2013/01/05(土) 19:08:20|
  2. たね
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Kinra

Kinra
通称ドンガリンゴP。でも好きなものはリンゴじゃなくて、言語です。今は訳者として毎日いろんな言語と戯れてます。そして極たまに、曲を作ったりもします。
Twitter: lwanvonling

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