どうも、新曲のPVを完成して、呪縛から解放された気分のドンガリンゴPです。
自分は曲を思いついてから実作に移るまでの間が長くなりがちな上に、
PVを作るのも結構遅い方なので、曲が公開した時には既に旧作になってることがよくありますが、
この曲もご多分に漏れず、実は2008年の作品です。
「これは日本語の歌詞をつけたほうがいいんじゃないかな」という一辺倒の評価を受けて
「日本語歌詞なんか絶対つけるもんか!!」って拗ねてた。
そしてそのまま7年間放置しました。
部員に中国語歌詞を書いていただいたこともあるけど、
デモを作った段階でみんなが卒業してバラバラになったせいで録音には移行しなかった。
結局、去年の8月にappyさんがツイッターで作詞したいって呟いたのをキッカケに、
この曲に対してケリをつけることにしました。
私自身が作詞しなかったのは、この曲に関するイメージは二つしかないからです。
「泣き叫ぶような歌」と「イメージカラーは緑」と。漠然。
前者は作詞を任せたということで拘らないことにしたけど、
後者は今回のPVに反映させてみた。
そしてシェイプトゥイーンでどこまでやれるか見るために、
私一人の作品じゃないのに1年もだらだら作ってました。
もしドンガリンゴPからコラボしようって誘いが来たらこんなことを覚悟していてね。
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- 2016/12/11(日) 22:27:12|
- かけら
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どうも、新曲のPV制作が詰んでるドンがリンゴPです。
やる気がまったく出ない中、昨年自分の掲示板に書いた「1imb0」の歌詞の説明を見て、
「そろそろかなぁ」と感じ、日本語に翻訳してここに貼ろうと思いました。
皆さんの解釈の余地を殺してしまいそうなほど詳しいので、
そんなのいやぁっていう方はハンマーとかでモニターをぶっ壊す、もしくはこのページを閉じてください。
ちなみにロラン・バルトの「作者の死」という概念が学界の主流になってますけど、
自分は「みんなで殺し合え」派ですので、
本文を読んで何か感想や質問があればコメントしていただけば嬉しいです。
それでは行きましょう。
◆
「1imb0」は、神が人類の世界を創る前に試作した機械の世界を描いた歌詞。
PV上、歌ってる人(二人?)は「はぐれボーカロイド」という名義なんだけど、
ストーリーでは歌うことを特に強調せず、単に「機械」として描いている。
Love, riot, categorize.昔の解説記事でも言及したとおり、元々は歌詞を「Rage」から始めるつもりだったが、
自分が大学で読んだ『イーリアス』の英訳本も「Rage」から始まったので、
意味も無く回避することにした。結局「Rage」は他の位置に入れたし。
Aメロに入れた英単語は全部命令形である。
コンピュータープログラムのコマンドは全て命令形なので、それを捩ったものである。
自律機械にとって、永久に実行されつづけるコマンドこそ「人生」で、
機械たちの人生の豊かさと多様性を描くために、
Aメロのこの位置には必ず、互いに対極を為す2つの言葉を入れている。
最初に登場したペアは、もっとも優しくて包容力のある行動と、
もっとも暴力で排他的な行動。
このペアは、私がずっと「あらゆる創造行為の原動力」
であると考えている2つの衝動に当たり、
《セックス》と《バイオレンス》とも言えるし、
《ロマンス》と《エピック》とも言えるし、
《萌え》と《燃え》とも言える。
だけど二極の後には必ず、正と負の無限なる振り子運動の中に構築されていく
《コンセンサス》というものが浮かび上がる。例えば、「分類する」。
「1imb0」が終わった後の世界でも、アダムはエデンの園の獣たちを命名したのだが、
それが「カテゴライズ」である。
Shiver, slay 殻の中で 旋回。「1imb0」は暗い雰囲気の曲なので、
Aメロの前半で二極を提示した以降、一辺倒に負の概念を羅列することで
その雰囲気を作り上げていく。
だから2行目からはもはや正と負ではなく、螺旋状に堕ちていく悪循環。
悪循環を描く序列の中で
「慄く」(被害者に成る)の後に「殺す」(加害者に成る)を置くのは、
自分の道徳観と言えるだろう。
生マレ 死ナセ 相継ぐ個体と個体の繋がりを強調したいので、「相」を入れた。
なので一つの個体が「誕生する・死ぬ」ではなく、
一つの個体が他の個体に「生まれる・死なせる」ことを語る。
韻を踏むためでもあるけど。
崩れかけのパラダイスは今日も平和だ試作された挙句置き去りにされた世界だから、
強制的に破棄されるまでは存続できるとは言え、
内部から見れば常に崩壊し続けている状態にあり、
完全崩壊寸前でバランスを保てているに過ぎない。
生産ラインの果て 神の国へ(堕ちる)そしてこの世界自身には、自給自足する価値も無い。
実験品であるゆえ、次の段階に貢献することだけがその存在意義だった。
このフレーズから、この世界を生きる命が無機物であることをほのめかし始める。
Rage, lust, rationalize.
Stray, rot ケイ素循環さ。2回目のAメロは振り幅をちょっと縮めて、
1回目ほど激しくなくなったが、基本のパターンは変わっていない。
二行目で破滅に向かっていくところも含めて。
前の記事にも言及したが、
「珪素循環」はアイザック・アシモフのエッセイで読んだコンセプト。
人類が炭素生命体であるように、機械は珪素生命体と言える。
アシモフは未来を想像する方向で珪素生命体という概念を提示したが、
この歌詞では逆に、「もし珪素生命体の方が先だったら」というシナリオを想像する。
組マレ 砕ケ 絶えなく前のフレーズで「機械の世界」という本質をバラしたので、
ここからは明示的に無機物を描く。
「砕キ」ではないところからもわかるかもしれないが、
《個体と個体の繋がりを強調する》よりも《韻を踏む》ことが重要だった。
それでも、《他の個体の存在》を示唆するようには工夫した。
作りかけのパラダイムを振り出しに戻す組み直せる珪素生命体でも、炭素生命体のようにライフサイクルがあって、
何度も組み直されることになる。
我々が何十年生きて、せっかく人生観を構築したのに死ななければならないように、
機械たちも《リセット》を何度も何度も繰り返している。
殻の外は夢見る約束の地
殻の外は光がある世界さ
殻の外は光がある浴びれば死ぬけどBメロは仕様上、分岐できるような歌詞を入れることが最優先なので、
「光がある世界」と「光のある世界」の違いをツイッターで質問することもあったが、
結局お構い無しに「光がある」を入れた。
この歌詞の話では、神は光を創ると同時に試作世界を抹消したので、
「光」がこの世界の生命にとって破滅の象徴になるのも自然である。
どうして 僕らに与えてくれないの?
どうして こんなのが生なの?「ど」を被らせるために疑問文にせざるを得なかったわけだが、
個人的に歌詞に疑問文を入れることは好きじゃない。
ネタ切れ感があるんで。
灰は塩に 塵は道に 作り直し 浪費は無し成句の「灰は灰に、塵は塵に」に、
聖書によく出てくる「塩」と「道」のイメージを入れて、
機械世界の生命に対する認識を描いた。
死して屍になることが終わりではない、屍からは新たな命が構成されると。
死も積もれば命となる 魂など自ずと憑くそして「塵も積もれば山となる」を捩って、更に極端な言い方をした。
生きること自体が死の集積であり、
生きている命は全て無数の小さな死によって構成されている、と。
この生命観では生と死は同時に存在するし、「魂」とは命の副作用でしかない。
僕らが追い込んだ神話 僕らの手で糧にしたら
聖なる物 無垢なる物 殻の中の何処にあるの?しかし、この事実を知ると、あらゆる神話は意味を成さなくなる。
神話とは、「屍が命を構成する」サイクルが無数に繰り返した前に、
「誰か」が残していった嘘でしかないし、
その「誰か」も、屍になっては命に組み直されて、
無数のサイクルを重ねながらも未だに存在しているから、
その嘘は現代を生きている我々が吐いたものとはなんら変わりなく、
神聖性などあるはずも無い。
そうやって機械たちは嘘を見破ったのだが、
そのせいで失われた神聖性を惜しむ羽目になる。
この歌詞を書いた時、ちょうど「神の粒子」と呼ばれるヒッグス粒子が
話題になっていた。
「神って、もう微粒子レベルまで追い込まれたんだな」と思った。
嗚呼 この場所もか
planned to be left out of heaven and hell全ての神話が崩壊した後、残されたのはただの世界である。
この世界にある生命はこの世界の中で循環するしかなく、どこにでも行けない。
天国も地獄も、光があった後に創られたあの世界のためのものだった。
Rise, change, demystify.3回目のAメロでは規模と激しさを更に縮めた。
文明の進歩と共にというか、機械たちの行為はもっと自制が効いてて、
もっと形而上のものになっている。
Take, break ゼロとイチを連打しかしいくら自制しても、2行目では「奪う」「壊す」で破滅に向かっていく。
後半のフレーズは、ぶっちゃけ雰囲気づくり以外の意図は特に無い。
(今思えば、存在すると破壊されてなくなるの繰り返しって解釈になりそうだけど、
0と1はどちらも存在してる状態なので、微妙に合わない)
引カレ 押サレ 続々積極性が落ちつつも、他の個体とのインタラクションを強調する。
薄れかけのパラライシスは誰の為なの?今まで描いてきた神話の崩壊は、
虚言による思考停止からの覚醒であるが、
実験世界の終焉へと繋がる道でもある。
枷を解き自由になりたい
枷を解き放たれる時を待ち倦む
枷を解き放たれる時身も砕けるの連用形の途中で分岐するというチャレンジだけど、
言っていること自体は前のフレーズと同じ。
覚醒したのはいいが、そのせいで破滅することになってしまう。
ちなみに「枷」の字は「ボカロ」に似てるから使ったのだけど、
隠しネタ程度に過ぎない。
のぞむのは こんなものか?
のぞむのは 慈悲という罰なのか?ここも「の」を被らせるために使える言葉は制限されてるけど、
ちょっとした抵抗として、気付きにくい兼用法(シレプシス)を入れてみた。
2行同時に歌う「のぞむ」だけど、
1行目は「望む」で2行目は「臨む」。
それでもネタ切れ感は否めないけど。特に1行目は。
産まれ抱かれ呼ばれ泣かれ離れ廃れ汚れ乱れ
焦がれ破れ遅れ溺れ恐れ暴れ潰れ壊れ
産み出され検定され調整され作り直され
上書きされ圧縮され暗号化され初期化され大サビはなんと言っても四角を描くのに一番悩んだ。汚い手もいろいろ使った。
最初の外周はまだ簡単で、
「同じ字で始まり同じ字で終わる」「文字数が同じ」だけでクリアできる。
(PVのサイズを考慮して「縦は18文字」という条件も設けたが、
実際に作ってみたらあんまり関係なかった)
リズムのために、連用形が「れ」で終わる言葉だけかき集めてきたところも
また面倒くさかった。
形式上の縛り以外に、内容上の縛りもあった。
片側(PVでは上+右)は「人間の感情」に関わる動詞を使い、
もう片側(左+下)は「機械のプロセス」に関わる動詞を使わなければならないという。
この世界のいろいろな生き様を振り返ることが大サビの目的なのだから。
禁じられ戒められ称えられ伝われ謳われ
辱められ貶められ蔑まれ慈しまれ
禁制され複製され分類され隠蔽され
最適化され再生され改名され削除され内周に入ると、形式上の縛りがキツくなってくる。
各辺から2文字ずつ削らないとダメなので、選べる言葉も大分制限されてしまう。
しかも外周の上+右にラ行下一段活用を使いすぎたせいでネタが切れてしまって、
内周では左+下と区別するために「『される』以外の受身」を使うことにした。
長さの制限も兼ねて、漢字の読みが長い動詞しか入らなかった。
電気と夢と熱と希望と涙の蒸気圧と
欲望の減数分裂と真(まこと)の臨界点
愛の放射壊変と悪の回折関数から
物語の極限は黙示(アポカリュプシス)に谺(こだま)するそして最内周。文字数制限が更にキツくなったせいで、
今までの縛りをすべて捨てても普通の日本語では入りきれない。
万策尽きたので、反則まがいな手を使うことに。
「まこと」と読んで「真」と書くとか「こだま」と読んで「谺」と書くとかは
辞書にある読みだからいいとして、
「アポカリュプシス」は今でもゴリ押しすぎだと思ってる。
嗚呼 いつか光(きみ)は 皆殺しに来るだろうここも例外的な読みを作ったが、
ぶっちゃけ「光」と言いたいのに2音しか入らなかったから
別の言葉を歌うことにしただけ。
歌詞は滅亡が来ていない状態で終わったが、
神はいずれこの実験品を破棄し、光あれと言われ
本当に創りたかった世界を誕生させることを予告した。
だがこうして、この歌詞は全体通して機械たちに我々と似たような感情を持たせ、
我々と似たような行為をさせ、我々と同じく神話を追い込ませ、
我々と似たような人生を歩ませることで、
逆に我々の方に遠回しな問いかけをすることになった。
では、我々の方は、本当に神が創りたかったものだろうか、と。
作詞した時はそこまで考えてなかったけどね。
本当にただ、あの機械たちの世界を想像したり同情したりしてただけだった。
同情する相手が自分だったことに気付かずに。
それでは、また何か語りたくなったときに会いましょう。新曲の発表記事だといいな。
- 2016/09/01(木) 22:38:11|
- さくひん
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どうも、30000語の翻訳仕事の傍らにこっそり新曲を作ってたドンがリンゴPです。
その新曲が今回投稿した、
『Primal Expressions』シリーズの2作目、「黒く蝕むもの」です。
今回は製作中で感想を書き溜めてたので、この記事で既にいろいろ紹介できる。
◆曲
元はアコーディオン用のインスト曲メロディとしてとして思いついたんだけど、リズムをずらしてみたらなんかキャッチーなイントロっぽくなったので、歌のイントロにした。
編曲どうすればいいのか分からなかったので、雰囲気の近いALI PROJECTの「鬼帝の剣」を参考にしたが、ドンガリンゴPの恒例として、あんまし真似できてない。
サビはジョジョ2部のOP曲「Bloody Stream」を聴きまくった結果だった。出たしの3音だけじゃなく、曲調の上げ下げも大体同じ。パクリと言えるんだろうか、これ。中途半端の。なんか勢いが「輪舞~revolution」と大体同じじゃない?とも思う。調声の脳内打ち合わせの時しばしばサビの出だしで「いさぎよーく ぬぎすーてる はだかーにーなーる」って歌ってしまう。でも今思えば大体同じリズムパターンは「Starwail」でも使ったしね。「いさぎーよくっ(ry
◆歌詞
歌詞は最初から「紅く燦くもの」から続くPrimal Expressionsシリーズとして書いていたけど、歌詞と曲の噛み合いを重視した結果、「黒」はどこにも入れる場所がなかった。噛み合いを重視しすぎたせいで、なんのことをテーマにしてるのか前回以上にわかりづらくなってると思うけど、まあ、黒だからね、テーマは黒いアレだよ。翅を捥いで引き裂いて堕としても血で大地を穢すアレだよ。何度殺しても数日経ったらまた其処にいたアレだよ。
同じ曲調には同じ母音のパターンを入れることが多くて、ある種新しい韻の踏み方と言えるかもしれない。むしろ、初心回帰して韻を踏む理由がなければ踏まないと考えるからこんな形になった。
PVは「紅く燦くもの」と大して変わらないから語れることは無いとして、
編曲・ミキシングについては次の機会で。ではでは。
- 2016/05/01(日) 13:55:45|
- さくひん
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どうも、やりたい事が多すぎるせいでどれも完成まですごくかかるから
発表した時点でどれも旧作になってしまってるドンガリンゴPです。
と、そんな言い訳は今回じゃ通用しない。本当にだいぶ昔の作品をリメイクしたわけだから。
自分のMIDI時代末期の作品で、
昔言ってた、台湾大学詞曲創作社の自主制作アルバムに収録されたこともある
「Afterdark Princess」という曲。
なんとこれは、私が始めて中国語の歌声合成で作った中国語曲です。
これまでは巡音ルカとかVY1とかAvannaとかでこじらせてたから、
今度こそ楽に中国語で調声できた。ついでに中国語UTAU初挑戦でもあった。
この前
波音リツでUTAU初体験した時とは大体同じ感想。
めんどくさいところもあるけど、VOCALOIDより便利なところも結構ある。
想像した声は結構狙って出せるし、出せない場合も原音ファイルを見れば何故出せないのか一目瞭然、
そういう透明なツールである。
初挑戦でありながら、望む声を出すために(子音を長くするとか鼻音を濃い目にするとか)、
いろんなとこで根本的なレベルまで調整してみた。
「Afterdark Princess」はとある王女を詠う歌詞なので、
女声に歌わせたら「王女が三人称で自己紹介してる」だと勘違いされて勝手にダセェ雰囲気にされるかもしれないと思って、
原曲は男声デュエットとして作ったんだけど、
今回は夏語遙の声のトーンが意外と似合ってて、音域を合わせたらいい感じになった。
ただし王女は歌っていない。
- 2015/12/22(火) 11:52:34|
- さくひん
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どうも、台風の中で部屋ごと震えてるドンガリンゴPです。怖いです。震えてる部屋が。
今回は予告通り、「Roamer with the Bell」の編曲とミキシングの話をします。
ドンガリンゴPの一人作業なので、編曲とミキシングがごちゃ混ぜになってるけど、
ミキシングはめちゃくちゃすぎてもうなにをしたかすら思い出せないので、
この記事はやむなく編曲に重心を置いて話したいと思います。
※今回のプロジェクトネームは「rwb」なので、以下はRWBと呼びます。
最初から「ハードウェアの限界までチャレンジする」という目標で始めたんだが、
当時の自分の環境といえば、32bitのWindows 7で、RAMは4GBしか使えなかったわけで、
RWBで多用することになったEastWest系の音源(QLSO×2+Ra+Colossus)は、
最初は1台フル稼働させただけでメモリがパンパンになってもう何もできなくなる。
これを克服するために64bit OSに変えてメモリを8GBにしたけど、
やっぱり重い音源は編集が完了次第一旦バウンスして
(ソフト音源が鳴らす音声を書き出して音源をアンロードする。Cubaseではフリーズという機能で簡単に出来る)
CPUやRAMへの負担を減らしておかないと編曲が進めない。
今でも、完成したRWBのプロジェクトは全音源フリーズした状態です。いくつか解除できるけど、全部解除したらクラッシュする。
これでも膨大なエフェクターだけでメモリを4.04GBも使うんだから、4GB時代のパソコンでは不可能だったね。
Q:そもそも編曲が終われば全部書き出してオーディオだけで作業するべきでは?
A:ミキシング最終日でもコードを変えたい!
そしてドンガリンゴPは、「1フレーズを全パート完成してから次のフレーズを作る」スタイルなので、
音源を交互に
フリーズ→解除→フリーズ→・・・という謎解きアクションゲームみたいな手順で編曲をしていく形になった。
結果は下図の有様でした。

上の青い線がある部分は音源の音声出力チャンネル。
真ん中の何かがチラホラある部分がボーカルトラック。
下の部分は、結局音を出さなかったチャンネルと、ソフト音源に演奏データを送るMIDIトラック。
後者は編曲そのものだから一番大切なところだけど、CPUとメモリへの負担はほぼゼロなので暗くした。
メモリ制限を更なる難題にしたのは、RWBという
曲のスタイルだった。
「吟遊詩人が唄った物語」という設定なので、雰囲気に沿って抑揚をつける曲になってて、
急ぐときはBPMが210をも超えるし、リタルダンドをかけるときは30をも下回る。しかも、1拍ごとにテンポが変わる。

この抑揚の付け方と来たら、もはや「考えるな、感じるんだ」の域なので、
試行錯誤をしながら決めていかないとダメだし、
1パートだけ作ったときに体感で決めたテンポも、パートを加えて曲の厚みが増えたらまた印象が変わる。
そして既に編曲をしているフレーズのテンポを変える度、
もう一度全音源を順番にフリーズ解除してフリーズしなおさなければならない。
出来ないことは無いけど、非常に時間が掛かるし、やる気もがっつり削がれる。
だから何年も放置することになったんだろう。
それでもこうして曲が完成したんだから、めでたく各トラックについて語っていこう。
(これのためにまたあの
忌々しいほどに重いプロジェクトファイルを開けて内容を見ないとダメなのはちょっとキツイけど。
大丈夫だドンガリンゴP!あなたはもう乗り越えたのよ!)
◆ピアノ
RWBの編曲はピアノで考えたんだから、当然ピアノ中心の編曲になった。
テンポ変化も、基本的にピアノパートを作成しながら考えた。上述の通り、後で微調整することも多かったけど。
この柔らかくて甘いピアノの音色は、Rolandの
Super Quartetという音源で、
低いベロシティで演奏するとこういう音が出るから、音量を上げれば完成です。
しかしこの音はミッドが厚すぎなのか、マスタリング段階で更に音圧上げようとすると音があっさり歪む。
これを解消するためにマルチバンドコンプレッサーでミッドを抑えたら、
逆に甘みが無くなって何の魅力も無いただのピアノになってしまうので、バランスが非常に難しい。
でも主役だから、時間かけて調整する価値は十二分にあった。
◆パッド
一番最初と一番最後だけ使った低音パッド。
最初からこの2箇所にしか使わないと決まってたので、フリーズせずにさっさと出力した。
おかげで何の音源で作ったかも忘れてしまった。
とにかくローが厚くて、ソロで聞いても環境によってはスピーカーが悲鳴を上げる。
そういう環境の視聴者にはここでお詫び申し上げます。
私もだよ。◆Ra組
EastWestの
Quantum Leap Raという、民族風好き御用達の音源。
量も多様性も中途半端なセレクションなので、「それっぽい民族風」ではなく「特定の民族の音楽」が作りたいときは
ちゃんとした音源と併用する必要があるけど。
RWBでは主にイントロ部のバックとして、シェイカー、
コラ、ギター、フレームドラム、
ジャンベを使った。
ギターは何気にいい音色。
◆ストリングス
簡単にストリングスって書いても、実際には8パートもある。
RWBは結構長いので、ゆっくり重ねていくことを念頭に置いてある。
主にEastWestの
Quantum Leap Symphonic Orchestraを使用するけど、
自分の持ってるバージョンでは殆ど最初からリバーブかかってる音色しかないので、
前に出したい場合はEdirol Orchestralなどの音源で補ってる。
結構重ねてるので、そのままだとボーカルが埋もれてしまうから、
EQで1200Hz辺りを切る他に、M/S処理でセンターを削ってある。
いまいち効果無い気がするけど。◆木管
木管はストリングスのような弦を擦る高音が無いので、
高音部のフルート・オーボエでも、主張しすぎずに雰囲気に華をもたらすことができる。
ボーカルの間に挟むのに最適です。
アトモスフィアさえ作ってくれれば前に出なくてもいいので、ミキシングもほぼ無調整で行ける。
◆ハープ
木管と同じく、間に挟む用のパート。
正直言ってこの曲にハープはちょっと華麗すぎたと思ったけど、
ストリングスを8パートも入れた時点で手遅れなので、元の理想である「素朴な吟遊詩人の歌」はこれで完全に諦めたのである。
◆金管
ストリングスがサビ1で全部登場したので、サビ2以降はブラスで更なる厚みを出すことになった。
元々は「そんなに大げさな曲にはしない」と考えていたのに、結局こうなってしまったことはちょっと悔しい。
聴いてる方には壮大に聴こえて悪くないかもしれないけど、この曲はブラス無しでなんとかしたかった。
◆ティンパニー・シンバル
両者とも演奏のバラエティーがそんなに無いので、
いくつかのサンプルを出力して、必要な場所にコピーするという形になった。
◆ヴィブラフォン・グロッケンシュピール
前者は甘みのある音を出す鉄琴、後者はオルゴールみたいな音を出す鉄琴、といえばわかるでしょう。
Q:わからない。
A:生きて。
両者とも、サビ以外の比較的静かなフレーズにしか使わないけど、夜の雰囲気をうまく醸してくれる。
◆ドラム
元々はみんなお馴染みXLN Audioの
Addictive Drumsを使ってたけど、
FXpansionの
BFD3がセール中だったので衝動買いしました。
ADと比べてすごく重いしクラッシュしやすいから、弄り回すのには不向きだけど、
既に完成したドラムトラックをそのままBFD3に置き換えてみたらいい感じになったのは幸運だった。
そもそもRWBという曲はそんなにドラムに依存しないので(サビ2はまったくドラム使わないし)、
ミキシングにもいつものようには悩まなかった。
◆ベース
なんか酒場みたいな雰囲気を目指してたので、低音部が既にいっぱいあるのにも拘らず、ウッドベースも入れました。
Spectrasonicの
Trilianを使用した。EastWestとBFD3の次にメモリを喰う音源だった。
Trilianは低音がすごく優秀な音源なので、むしろ高音を出す工夫が必要です。
EQでミッドをめちゃくちゃ切って、5000Hz以上を8dBも上げました。
◆ギター
AvannaのイントロからいたRaのギターとは別に、サビ1から左に登場したコード弾きのギター。
なんかキラキラが足りないと感じたから加えてみた。
なので、コードが聞こえなくても、なんかギャンギャンしてるぞ!って感じたらOKです。
◆効果音
「水の音」「椅子が軋む音」「ページをめくる音」「ガラスの音」の4つがある。
「水」は川辺の森という設定からの音で、「ページ」と「椅子」は酒場のような場所で観客に唄うという設定からの音だから、
物語の中と外の二重構造が同時に存在していることになる。
そして「ガラス」は、一つの音でこの二重構造を象徴している。
最初にガランと鳴った時は、酒場の客たちが曲を聴きながら飲んでる、
もしくは歌い手が歌いだす前に一杯飲む、というイメージだったけど、
大サビで「Tapping my lantern pane」の直後に再びガランと鳴った時には、
「民俗学者の杖がカンテラのガラスに当たった音」になっている。
同時にタイトルである「鈴を持った放浪者」の意味へのヒントでもある。
なのでこの効果音は最大のネタバレと言っても過言ではないけど、
ほんの一瞬でしかも小さい音量だったので、普通は気付かないだろう。
・・・おっと、普通気付かないようなネタバレをブログ記事でさらっと言っちゃった。
そういう創作者の風上にも置けないヤツは、台風のド真ん中に置いてやればいいんだ。
というわけで、台風の中で晩ご飯を買いに出かけます。生きて帰れたらまた会おう!
- 2015/09/28(月) 19:14:39|
- さくひん
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